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1月 日本キリスト召団発足元年に寄せて

34年前、私はその2年前1982年に生まれたばかりの札幌キリスト召団、水谷幹夫先生に一通の手紙を書いて人生の行き詰まりを訴えた。すると、先生は京都キリスト召団主催の秋期福音特別集会に誘ってくださった。そこで初めて小池辰雄先生のメッセージと水谷先生はじめ信徒の方々の証を聴き、魂の叫びとでもいうような祈りの空気に触れ、「こんな世界があったのか」と衝撃を受けた。
その集会は信仰という日常生活空間とはまた異次元の空間にあり、別の時間と空気が流れていた。圧倒的違和感や生理的拒絶感がありながら、なぜかグイグイと惹き寄せられ、ついには北海道の余市惠泉塾に来ることになって今日に至っている。自分の生きる意味すら見いだせなくて苦しむ魂にとっての光明であったのだろう。
「光のあるうちに光の中を歩め」と聖句にある通り、一筋の光を求めて歩いてきて良かった。それが信仰の正道であったことが、20年後の生ける神の言葉との出会いによって証明されたからだ。そのときに私が受けた福音は長い年月をかけて醸成され、吟味され、精錬されて次代に手渡すべきものであった。知識もなく何も分からないのに、それが直感的に分かるような体験をさせていただいた。後輩に手渡すものがあるとは何という幸いだろう。
小池辰雄先生の「無」のスピリットは水谷先生率いる札幌キリスト召団に引き継がれた。「無の神学」の土台の上に十字架の愛の実践を積み上げてきたら、愛する者に再創造され、観念信仰を打破して本物の信仰、真理の高みに到達することができたと「ニュース・レター」の中で水谷先生は語る。
「十字架」「復活」「聖霊」の出来事を「神の秘められた計画であるキリスト」に結び合わせるという霊的理解へと招き寄せたい神は、長い間秘められてきた奥義、しかし、新約時代、パウロにひらいて見せてくださったのに、それ以来誰にも注目されなかった聖書の真理を、21世紀になってから水谷先生に啓示された。神が最も語りたかった創造目的は、皮肉なことに、それまでキリスト教2000年の歴史の中に埋もれたまま、どの教派にも神学者にも理解されなかったのだ。異なる者同士が分裂せず、互いに愛し合って一つとなる世界づくりがこんなにパウロによって声高に叫ばれているのに、教会教派の細分化、分派分裂の果てしない抗争を繰り返すキリスト教会史の実情はどうだろう。
2018年のある朝の祈りの中で、水谷先生に、この群れは「札幌キリスト召団」ではなく「日本キリスト召団」と名乗るべきだという思いが与えられたという。この群れにはリアリティがあり、実質があり、世界的な広がりがある。水谷先生は「日本キリスト召団」を立ち上げた小池先生の思いを復活させたかったという。何よりも神がそれをお喜びになると確信したからだそうだ。
イスラエルに、世界に「愛し合って一つとなる世界づくり」という「神の秘められた計画」を実現成就しなければならない。神はその目的でアブラハムを選んだ。イスラエルは、しかし、祝福を独占する方向へと歴史を捻じ曲げ、聖なる神の計画を頓挫させてしまった。そして、驚くことに、召団はこの神の計画、創造の目的を啓示された世界唯一の群れなのだ。
私は何も知らずにただついてきただけの者に過ぎないが、数人で始まった札幌キリスト召団が36年で350人となり、日本キリスト召団の名にふさわしく育っているのを文字通り目の当たりにした。ここが命ある群れであることは誰の目にも歴然としている。一人の愛の実践家と神は共におられた。曰く、「第一世代の兄姉! 良き模範たれよ。イエスに忠実従順な奴隷たれよ。残りの短い人生が後輩の“肥やし”になるように努力せよ」と。こんな私にも神様が期待してくださっているならば、生涯現役で天国づくりに用いていただきたい。(余市惠泉塾 長野初美)