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2017年1月 みくにへの“旅支度”…置き土産は“隣人愛”

「旅支度」とは一体何をどうすることだろう?と今年度、惠泉塾の担当者で話し合った。リーダーの伊藤泰輔さ

んによると、係としてできることは高齢者の方々に寄り添うことではないかと思うが、それ以上具体的な名案が思い浮かばないので、顧問の水谷先生にお伺いしたとのことだ。先生は、実に自由な発想で次々にいろいろな提案をしてくださったそうで、その一つが「ミニ講演会」だった。高齢であるなしにかかわらず「旅支度」はすべてのクリスチャンに必要だが、特に高齢の方々に「生きていて良かった」という思いが湧き、神様への感謝が湧くような、人生を肯定的に振り返るチャンスをつくってあげられたら素晴らしい、と。こうして慌しい年末のある日曜日の午後、余市惠泉塾「旅支度」が主催する第1回のミニ講演会が実現した。お話は76歳の森邦子さん、テーマは「人生で分かったこと」「若い人に伝えたいこと」、会場は新惠泉庵の囲炉裏の間、全員で20名ほどの集いとなった。森さんご夫妻は4年前、引きこもりの息子さんのために埼玉の自宅を引き払って惠泉ヴィレッジに転居された。現在、息子さんは職業訓練生として「珈琲とパンの店ヴィタ」で働き、邦子さんは得意のお料理の腕を生かして「惠泉虹乃家」で毎日奉仕されている。この日も自家製手づくりケーキで聴衆をもてなしながらの和やかなひとときとなり、その上、息子さんによる焙煎コーヒー付きということで話題を呼んだ。 ところで、邦子さんは札幌キリスト召団の勧める「葬儀の備え」をしっかり書いておられ、当日はその資料をもとに話してくださった。東京生まれの彼女の実家は「一葉式生け花」の家元。華やかな外見の裏の虚飾に満ちた人間関係に疲れ果て、生け花に対する喜びも失せかけた頃、クリスチャンのご主人との出会いがあったという。結婚によって心の平安を得た邦子さんだが、自分自身の父親に対する愛のなさに罪を感じて受洗、クリスチャンになった。その後、長男が引きこもるという問題にも苦しんだ果てに惠泉塾に出会い、神様に力強く導かれて今日に至っている、というお話をしてくださった。 今回の企画を通して伊藤泰輔さんは、高齢者が自分の人生を振り返り、特に若い人のために語ることは“隣人愛”の実践ではないだろうかと、まとめてくださった。 夫の茂充さんが傍らでときどき補足説明を加えながら妻を見守り、邦子さんはその安心感の中、お話の最後に今の願いを力強く語られた。「惠泉塾のような、互いに愛し合って暮らす場を若い人が受継ぎ、さらに広げていってほしい」と。 このミニ講演会に参加した若者の感想を一つ紹介したい。 「惠泉塾の家族としての邦子さんの人生をお聞きすることができて、邦子さんへの親しみが一層増し加わりました。邦子さんを囲んで、その隣にご主人がおられ、息子さんが珈琲を入れてくださり、何と主に愛されているご家族だろう!と思いました。邦子さんを中心に、皆が一つとなった温かい空気、ほのぼのとした空気が会場に満ちていました。手づくりのお菓子も大変おいしかったです。」