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5月 風光る惠泉塾の朝礼で ~『幸せな見取り』読書会の紹介 小林正幸さんの話 ~

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今朝は、第2回『しあわせな看取り』読書会の報告をします。この会は岸本みくに著『しあわせな看取り』をテキストに、看取りや介護について、職種や立場を越えて本音で話し合える場を提供することを目的に開催しています。第1回は講師に著者岸本みくにさんをお迎えしましたが、今回は彼女の先輩に当たる清野喜久美さんをお迎えし、前回を上回る47名の参加者で実施されました。初参加の方も多く、ケアマネージャー、看護師、町役場職員や村の地域包括支援センター職員などの行政関係者、マリア訪問看護の元利用者家族、と多彩な顔ぶれが揃いました。
今回の読書会のテキストは「もう十分生きました」というタイトルの章で、水谷先生のお母様が悪性リンパ腫の末期で、最期の時間を余市で過ごされたときの様子について書かれたものです。お母様は沢山の人に尽くしてこられて、「もう十分生きた」が口癖でしたが、衰弱が進むと、自分の人生がこれでよかったのかという思いが湧いて不安になられました。すぐ駆けつけた水谷先生の「神様を信頼して委ねるだけでいいんだよ」という言葉に安心され、顔の表情まで変わって最期の時を安らかに、前向きに受け入れられたということです。
その折に傍にいたという小樽の大島公子さんが、「死ぬことは決して不幸ではないと感じた」と実体験者ならではの生の声を聞かせてくださり、臨場感溢れる空気に包まれました。また、その大島さん自身、末期癌で先日亡くなられた娘さんを看取ったときの貴重な体験を参加者に語ってくださいました。水谷先生から、「娘さんは今、見える世界から見えない世界へ移ろうとしているのですよ」というお話があったこと、娘さんの仕事がケアマネで、病気のことや残された時間のことすべてが分かっていて、淡々とご自分の旅支度に向き合われたことなど…。他の参加者も、こうした体験報告や、清野さんの落ち着いた、柔らかな口調で話をされる姿に、心を開かれた様子でした。
ある方の質問に「亡くなる瞬間まで本人を揺すって頑張れ、と励ますことがあるが、息がなくなる間際、頑張れと言われて1時間位辛かったという体験の持ち主もいる。どう導けば良いのか」とありました。清野さんは「看取りの現場は家族との別れの時間でもある。誰かを待っていることもある。励ますことより、ありがとうの一言が言えて、わだかまりがあれば和解して、心安らかに送り出してあげられることが大事では?」と答えられました。
アンケートの中で、「特に印象深かったこと」を紹介すると―― 。「見取りについての考えが変わった」「看取りの際の、家族の接し方の話を聞いてとても考えさせられた。今まで聞いたことのない話だった」「自分の最期にどうしたいか、生きている間に家族に知ってもらうことが大事だと思った」「リビングウィル(生前の意思)を作成することの大切さを知った」「清野さんのお話はとても身に染みる話だった」「訪問看護・介護は大変だが、重要な、やりがいのある仕事だと思った。今後の励みにしたい」「難しいことだが、逝く人も送る人も心安らかにそのときを過ごすことができたら、と思った」「いろいろなケースを聞くことで、死を迎えることに向き合える時間ができた」など、貴重なご感想をいただきました。
また、「看取りについてのこのような深い話し合いは、体験報告も含めて他に例を見ない。とても驚いた」と話してくださった方がいて、私の印象に強く残りました。参加者が真剣に本気で向き合おうとしている姿勢が感じられた読書会でした。
これがきっかけとなって新しい動きが起こり、世にはないこのグループの活動を通して、世の常識を覆す神様の働きがさらに広がることを願っています。