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沖縄惠泉塾&クリニック『建設完成感謝会』への道 ~大澤憲一師の手記より~

 

一 「10月15日の引き渡しはできません」

 

沖縄での新施設建設のため、照正組との話し合いが進められる中、私は建築費用の支払いのことで心配していた。水谷先生は、「支払いに関しては僕が全責任を負うから、安心していなさい。君が負ったら潰れてしまう」と言ってくださり、自分が心配することではないし、心配しても仕方がないと思いつつ、やはりあれこれ考えてしまう。

もちろん、先生が手がけてこられた建物の建設は、すべて神様が必要を満たしてくださっていたことは知っていた。1億円という支払いが奇跡的に期限ギリギリで満たされたことがあるのも知っていた。しかし、支払い金額が5億円台から6億円、さらに最終的には7億3千万円まで膨らんだとき、本当に大丈夫なのかと思った。照正組の担当者からは、無理なく支払えるよう、半年おきに1億円とか1億5千万円というふうに分割して払っていただければ、との申し出があったが、先生は「完成と同時に支払いを終えます」とキッパリ伝えられた。せっかく担当者から言ってもらったのだから、その方が無難なのでは?と思ってしまったことは、今から考えれば私自身の不信仰だったとしか言いようがない。

さらに、水谷先生は「10月15日には支払いを完了して引き渡しをします」と宣言された。私たちは慌てて引っ越し、入居の準備を始めた。なぜそんなに急がれるのかと思ったが、これは、引き渡しが済むまで照正組が建物の保険などすべて負担することになるので、その負担を早くなくしたいという先生のご配慮からであったことが後でわかった。10月15日が近づき、実に5億円の支払いが終わっていた。5億円という途方もないお金が集まったこと自体、すでに奇跡的と言える。しかし、あと2億円以上必要なのだ。

一方、私たちは完成した建物の中に初めて入ることができた。建物に入ったとき、もちろんその素晴らしさに圧倒されたことは当然だが、今回は皆、ある種の畏れを感じた。ある人が「本当にここに入ることになるのか。何かおそろしい…」と言っていたが、それは皆が感じていたことだと思う。

しかし、引き渡し予定日前日、衝撃的なニュースが入った。支払い金額は大幅に足りず、照正組から「15日の引き渡しはできません」との連絡があったのだ。実際には情報の行き違いがあり、3棟全ての引き渡しはできない、とりあえず5億円は入っているので、居住棟だけ15日に引き渡すということになっていたようだが、いずれにせよ支払いができなかったことには違いない。

15日朝、北谷のマンションまでの水谷先生のお迎えは私の担当だった。一体どんな顔をして先生にお会いしたらよいのか。ところが、マンションに着くと、先生は全く動揺されておらず、キッパリと「はっきり示されたね。さすがは神様だ」とおっしゃった。「僕の人生で期限までに支払いができなかったことは一回もない。しかし、今回はできなかった。これは神様がはっきり示されたということだ。それを今日、全国の皆さんの前でお話しする。もうその手配はしている」とおっしゃった。神様が示されたこととは何だろう。私にはわからなかったが、「わかりました」とだけお答えした。

 

二 聖域に入る資格はない、と示されて

 

照正組からは、居住棟だけなら本日引き渡しが可能だと伝えられたが、先生はキッパリと断られ、「引き渡しは全額支払ってからしてもらうことにします、工事費は必ず支払いますから」とおっしゃった。それから、正面のヒンプン(沖縄で悪いものが建物内に入らないように入り口前に立てる屏風のような構造物)の前に立たれ、全国の召団員にあててメッセージを語られた。

「今回、期限までに支払いができなかったのは神様がとどめられたからだ。つまり沖縄のメンバーが愛し合えていないからであり、神様はそのことをはっきり示された。今回はできなかったが、皆が持てるものを出し合えば、必ずできる。神様にはその力がおありになるのだから。」

そうか、神様が示されたのはこれだったのか。今さらながら私は衝撃を受けた。この聖域に入るにはまだその資格が備わっていなかったのだ。すなわち、私たちが愛する者となっていないことが、全国の皆さんの前にはっきりと示された。これから事を始めるにあたり、その事業に携わる者は、自己犠牲の愛に生きる神の僕でなければならない、と神様が厳粛に宣言されたのだ。

水谷先生のメッセージが終わった直後から、献金に関する問い合わせが文字通り殺到した。残り2億3千万円の支払い残高がどんどん減っていった。先生は11月10日を「建築完成感謝会」の日と指定された。しかし、私はこの時点でもまだ不信仰であった。支払いが終わるまでは建物に入らないと宣言されており、終わらない前提で、屋外の駐車場で感謝会を行う準備を始めたのだ。しかし、先生は、感謝会は新しい居住棟の1階ホールで行う、厨房も使う、と言われ、私の思い違いが明らかになった。

屋外でする場合、料理を外部から取り寄せるつもりであった。が、屋内でするよう、また手作りの料理で照正組の皆さんをおもてなしするよう、指示された。時間がない中、大宜味だけでなく、与那原や中部の人たちも含めて全員が力を合わせて料理の準備を開始した。とても大変だったが、大宜味の現場リーダーを中心に取り組み、神様のみこころがなるようにと祈りつつ、無我夢中で働いた。

しかし、さらに衝撃的なニュースが飛び込んできた。余市で、水谷先生の手が急に動かなくなり、病院で脳梗塞の発作と診断されたという。医師から絶対入院するよう厳命されたにもかかわらず、先生は予定通り沖縄に行くと明言、文字通り命がけで、この沖縄での事業のために来られる決意をされたのである。そして、神様は先生を守りぬいてくださった。沖縄に来られた時、相当お疲れであったし弱っておられたが、発作の再発は起こらなかった。

献金額は11月10日の前日、実にあと2千万円というところまで満たされていた。1日あたり1千万円という信じられないペースである。しかし、それでもあと2千万円。とにかく皆で祈った。そして前日の夕方5時前、加藤幸さんから「全額満たされました!」との連絡が入った。生きて働かれる神様がその栄光をあらわされた瞬間だった。一瞬、本当のこととは思えなかった。次の瞬間、喜びと神様への感謝が突き上げてきた。ただ「神様、あなたの栄光をほめたたえます。あなたがここまでしてくださったこの事業のために身を捨てて働きます」としか言えなかった。25日間で2億3千万円の必要が満たされたのだ。

 

三 全能の神、その名は「不思議」

 

「建設完成感謝会」で、水谷先生は照屋義実さんに対して心からの感謝を表明された。お金がないのがわかっているのに7億という工事を引き受けてくださったこと。会社の命運をかけて信頼してくださったこと。この会はその義実さんに対する感謝の会である、と挨拶された。しかし、その後で挨拶に立たれた義実さんは、「私は水谷先生が全額お支払いされることを、一度も疑ったことはありません」と驚くべき発言をされた。「イスラエルの内にも私はこれほどの信仰を見たことがない」とイエス様に言わせたあの百人隊長のように、クリスチャンでない義実さんが私たちに信仰を見せてくれたのである。神様は沖縄に何という人を備えてくださったのだろう。

感謝会の最後、弱り果てたお体にもかかわらず、皆さんの喜びのためにと立ち上がられ、全力で、カチャーシーの踊りの輪に加わってくださる水谷先生のお姿があった。不思議な感動が会場に満ちた。沖縄惠泉塾の皆の心が一つになっていた。ある人が、「夢の中にいるようで、現実のこととは思われなかった」と後で言っておられたが、まさしく全員そのように感じていたと思う。

その翌日、水谷先生から、さらに驚くような指示が立て続けに出された。新しい建物に今すぐ入居はしない、来年の1月から半年、水谷先生ご自身が月に1週間この建物で私たちと一緒に生活され、じかに愛し合う生活を指導してくださるという。最初は少人数で入居、訓練を受けて愛し合う空気が出せるようになったら、その輪の中に徐々に他のメンバーを加え、目指す共同体づくりをしていくという。「惠泉シオン」と「ひかり」は一旦休業することも発表された。愛し合う事業所として再生されるための休業である。そして、これから始まる新しい医療、看護、介護の働きの基本方針が発表された。

国の金に頼らない。医療保険、介護保険は一切使わない。「金持ちは良い医療を受けられるが、貧乏人は必要な医療すら受けられない」というこの世の常識を根底から覆す。患者さん、利用者さんには診療の対価としての報酬をあらかじめ設定せず、私たちの働きに対する感謝に基づき、その人の思われた金額を自由に献金していただく。みんなで感動的な働きをしよう。人を感動させる仕事をすれば、お金は入ってくる。——— 先生はそう語られた。

「見よ、新しいことを私はする」(イザヤ43:19)。全く新しい方針が打ち出されたのである。沖縄のやんばる地域においては介護保険料すら十分払えない貧しい人たちも多い。彼等に対する、これは何という福音だろう。神様が経営され、神様が働かれ、神様が癒される病院。そのような病院は世界中、どこを探してもないだろう。しかし、本当にこのような働きが可能なのだろうか。経済的に成り立つのだろうか。

 

今回、神様は二つのことを同時に示された。この働きは、神の子、愛する者でなければ参加できないこと。神様はあえて期限までに支払いができないという現実を通してそれをはっきり示された。そしてもう一つ、この働きは、人間の事業ではなく、神様が始められた神のご事業であること。7億3千万円を集める力をお持ちの方は、まさに今も働き給う全能の神であり、この方が今後もこの事業を支えてくださる、ということである。私たちのなすべきはただこの神様にのみ信頼し、全身を投げ出して愛し合うことをさせていただくのみである。

今回、神様はご自身の栄光をあらわしてくださった。願わくは、真に沖縄が神様の癒しの島となり、全世界の光となりますように。これからもさらなる栄光があらわされますように。