(ヨブ記第9章(その1))
ヨブの友達は、教えられた通りの神を信じている。また、教えられた教義で間に合うほどに、波乱の少ない穏やかな人生を歩いて来ることができた人たちだったのだろう。かつてのヨブも同様だった。
しかし、家族と財産を失った上に不知の病に全身蝕まれたヨブは、そんな血の通わない教義信仰では間に合わなくなったのだ。ヨブは目の前の現実と教義が合わないじゃないか、と友に訴える。第一に、神は全き人を捨てられない、と言うが、我々人間は、どんなに頑張っても暴君のような神の前に、彼に気に入られるような存在ではいられない。神は知恵も権力も一手に集中し独占しているから、無力無能の虫けらの如き我々は神が何を考えているか見当もつかないし、神の尋問にどう受け答えしたら良いものか全くわからない。へたに発言すると揚げ足を取られて、私は自分の口で有罪判決を招き寄せるような愚かな真似をしかねない。裁判長であり検事であり刑の執行人でもある神、という絶対的権力者に、私に罪はありません!!と叫んでも「有罪」という無情な一言で、刑は執行される。