それぞれの収穫物の初物をささげ/豊かに持っている中からささげて主を敬え。そうすれば、主はあなたの倉に穀物を満たし/搾り場に新しい酒を溢れさせてくださる。 (箴言3:9、10 新共同訳)
今年になってから、新型肺炎と言われるコロナ感染問題がニュースや新聞で騒がれ始めたのは、皆さんの記憶にまだ新しいと思います。それから約半年近くで世界が一変する事態となり、「不要不急の外出は自粛してください」との言葉に私たちの生活、ある人には人生までもが狂わされる結果になっていきました。
2月に入り、日を追ってイベントや集会が中止になっていきましたが、私たちも月一回、車で行っている野菜の直売を2月から休止したことを思い出します。マスクや消毒液が店頭から姿を消し、通常の10倍近い価格でインターネットなどを使って取引され始めたのもこの頃でした。
緊迫し始めた中で最初に感じたのは、9年前の2011年3月11日に起きた東日本大震災の異様な緊張感でした。内容は異なっても、群集心理なのでしょうか、自分がまず安全を確保したいと焦る空気には共通するものがあると思いました。その震災の際、北海道余市惠泉塾では耕作面積を増やし、被害の大きかった福島やその周辺の仲間に野菜を送れるよう、準備したことを思い出しました。
そこで、今回は、我孫子惠泉塾で、全国の必要とされているところに野菜を送る必要があると感じ、2月中に可能な限りの畑の準備を行いました。3月か4月に行っていた土作り、種まき、育苗、種芋の植え付けなどを、1ヵ月以上早め、量もいつもの倍に増やしました。
私たちは、千葉県と茨城県の県境に位置している我孫子市で惠泉塾を営んでいます。現在、総勢8名の構成メンバーで塾の運営を進めています。塾生5名と管理者2名、あと年配の婦人を1人塾に迎えて一緒に暮らしております。この騒動が起きてからは8名が一丸となって「野菜を全国の各拠点に届けよう」と、農作業に励むようになりました。目標ができたので塾生たちも喜んで熱心に仕事に取り組み、拠点の方々の笑顔を見ることが大きな希望となったようです。
3月下旬頃からは小松菜、キャベツ等「葉物」の収穫が始まり、余市をはじめ、全国に送ることができました。その後、ニンニク、ジャガイモ、ニンジン、キュウリ、モロヘイヤの収穫も通常の1ヵ月以上も早く開始することができました。新規就農9年目に入りますが、いつもはこんなに予定通り行かないのが私たちの農業の常であります。しかし、今年はほとんど失敗もなく、驚くくらい順調に野菜が生長しました。収穫もいつもより多く、これは神様が働かれている!と感じました。
ジャガイモなど、恥ずかしながら、ここ数年は収量も少なく小ぶりなものばかりが続いておりましたが、今年は一株あたりになるイモの量の多いこと、形も大きいことに気づかされました。この豊かな実りの祝福は、やはり、他者を生かそう、助けようという今年の農業方針を神様が喜んでくださり、受け入れてくださったのだと受け止めました。
惠泉塾の農業は塾生を育てる教育の一環です。利益を求めての活動ではありませんので大量に生産して大量に売りさばくという目的はありません。しかし、塾生たちは、仲間を助けたいとの思いで一丸となって農作業に精を出しました。すると現在、例年の2倍くらいの野菜が、いつもより早いペースで収穫できているという状態です。
「いやあ、神様のやり方は本当に素晴らしいなぁ」と改めて思いました。無料で受けた恵みですから、無料で皆さんにお分かちできるよう、これからも努め励んでいきたいと願っています。早速、各拠点からは、野菜のお礼が、喜びの言葉と共に届いております。それを読んだ塾生たちが、また、他者のために生きることの素晴らしさに気づいて、もっともっと拠点に野菜を送りたい!と言ってくれています。そのような塾生の変化こそ、私たちにとって一番の喜びです。これからもさらに、私たちの畑が神様のために用いられるよう願ってやみません。後先になりましたが、皆さんがこの新型肺炎による感染やその他の健康被害から守られますよう、心からお祈りしています。