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11月 野菜から教えられたこと ~農業班リーダー藤川和夫さんの証より~

 今年の余市は異常気象で初夏を過ぎても気温が上がらず、雨が多くて苗の生育が悪かった。葉っぱの色も薄く

、貧血気味で病弱な人の顔のように青白い。その上、葉っぱを食べる虫が多発してナスの葉にいたってはボロボロになった。リーダーを務めた4年間の農業の中で一番ひどい。いずれ、ナスもピーマンも全滅でしたと報告しなければならないだろう。私はひそかに覚悟した。 それでも、農業普及委員に相談したり、塾生たちとあれこれ思いつく限りの策を労したりと試行錯誤を重ねた。そのうち気温も上がり始め、徐々に葉の色が回復し、敵なるサタンをひねりつぶすごとくに虫をブチブチ潰していくと、敵も警戒したのか、ほとんど姿を見せなくなった。虫の世界に連絡網でもあるのだろうか。ピーマンやナスの根っこの周りの土をほぐし、雑草を抜いた。そして、まだ苗なのに花を咲かせ実をつけようとするので、早すぎるからもう少し待ってね、と言い聞かせながら花を摘んだ。 ボロボロのナスの葉っぱを取り除く作業では一つ一つの苗の形が個性的になり、オーダーメードの剪定のようになった。本当にこれで大丈夫だろうかと毎日様子を見守ったが、私たちが手をかけるほどに野菜たちも頑張ってくれるのが分かる。次第に苗は大きくなり、新しい丈夫な葉っぱが生えてきて、試行錯誤の農作業にもかかわらず、立派な大人の野菜に成長してくれた。  結果的に、今年の夏野菜は豊作だった。特にピーマンは大豊作で味も良く、3年間苦労したナスも、厳しかった今年の方がかえって良い実がたくさん取れた。そのほかの野菜もおおむね良かった。野菜を育てながら感じたことは、神様はこんなふうに私たちを育ててくださっているのだなということだ。特に、私は惠泉塾に来た最初、あのナスの葉っぱのようにボロボロだったので、神様はさぞかし試行錯誤なさったに違いない。  ジャガイモから学んだことがある。ジャガイモのために用意した畑にすべての種芋を植えると男爵が残った。出来のわるい種芋ばかりで、もう空いている畑もないしどうしようかと思いつつタマネギの苗植え作業を終えると、2列だけ畝が余った。それならば、ダメかもしれないが…と思いつつ、ジャガイモ用に簡単な畝を作って植えておいた。 今年はキタアカリやメークインの収穫が良く、男爵の出来は今一つ…。虫食いもあり、質量ともに見劣りがする。そして、男爵の最後の収穫はあの2列だけ植えた畑だ。掘ってみるとダメでもともとのつもりで植えた種芋なのに、何と、立派な男爵がたくさん取れた。種芋150キロの中で一番出来の悪いものを植えたにもかかわらず、まさか一番立派なジャガイモに育っているとは…、神には何でもできるとは聞いていたが、まさかこんなことがあるとは…。私の常識は完全に打ち砕かれた。 最後に男爵を植えた畑は例年野菜がよくできる良い土の畑だった。良い土(よいつち)、余市(よいち)、と語呂を合わせるとき、壊れた私自身と種芋とが重なる。この種芋のように世間から見捨てられた私が今、良い土、余市(惠泉塾)に植えられ、新しい人生を歩ませていただいている。野菜の世話をしながら神様の気持ちが分かり、神様に愛されている自分のことも分かった。また、塾生自身、こんなふうに神様に愛されているのかと、自分と野菜を重ねて感動している場面が何度もあった。苦労するほど神様が関与してくださり、感動もまた大きい。苦労して神様に愛されて成長した人は、人格的にも魅力的で豊かな実をつけるのではないだろうか。