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12月 惠泉塾で行われたノンクリスチャンの葬儀式

 神は御自分にかたどって人を創造された。神にかたどって創造された。 (創世記1:27)

 2016年11月17日、「惠泉虹乃家」で長谷川洋行さんという未信者の方の葬儀式が行われた。享年80歳のその老人は彼自身が一個の芸術作品のような人で、誰一人彼をトータルに知る人はいないという。しかし、司式を執り行った木下肇牧師のメッセージと友人の弔辞は彼の人となりを豊かに表現していた。また、参列者は葬儀から、神様が長谷川洋行というご自分の作品をどんなに愛しておられたかを窺い知ることができ、深い感動に包まれた。誰も真似することのできない大きな仕事を残し、現役のまま最前線で戦って世を去った80年の人生は存分に生きたと言えるのではないか、と木下さんは語った。  彼はまた、木下さんの親戚にあたり、その人生に深い影響を与えた。叔母の結婚式で長谷川さんに出会ったとき、当時高校3年生の木下さんは人生に行き悩んでいた。長谷川さんに相談すると、「何でもいいから誰にも真似のできない仕事をするといい」と言って励ましてくれたそうだ。そして後年、再び人生に行き詰まったとき、「手に職をつけるといい、職業訓練校へ行って木工でもやったら?」とのアドバイスをくれた。この言葉がきっかけで天職と出合った木下さんは、その後35年木工の仕事に携わることになったのである。  長谷川さんは何よりも芸術を愛し、その人間が表現する表現行為にスポットを当てた。新聞記者、大学講師、コピーライター、美術展プロデューサーなど職歴も多彩だ。1993年、小樽の妻の実家の質感を生かして森ヒロコ・スタシス美術館を開設、画廊経営をしながら妻の版画家としての才能を発掘した人でもある。また、彼は東欧の魅力的な、しかし、日の当たらない芸術家を日本に招いて活躍の場を与え、日本人の知らない世界を見せた。1997年からは、庶民が楽しめる本場のオペラ歌手による公演を開始、全国各地で毎年開催した。この“オペラの怪人”の創造エネルギーはその後も止まるところを知らず、2013年、歌手を中心とした6人グループ「ドナウの歌の力」を結成、本場のオペラを低料金で提供するという道なき道を行き、開拓者魂を燃やし続けた。2014年には水谷幹夫先生の招きにより、惠泉塾特設野外ステージでの「オペラとオペレッタの饗宴 余市公演」を実現させ、約200人が無料で本物のオペラを堪能することができた。  一方、2013年に妻が癌に倒れて体調を崩してからは、炊事、掃除、洗濯など家事一切を、近年は妻の入浴介助、洗髪までを自らの手でしており、事故で亡くなる直前まで妻の世話をしたという。これと思うものに出会って目をかけたら、とことん愛して生かそうとする長谷川さんが最期に愛したのは妻であった。外に向かっては戦っていた彼が、内に向かって家庭では一生懸命妻に仕えていた。森ヒロコという神の作品、神が表現した一個の芸術作品を愛し抜いたと言えるのではないだろうか。  生きることを模索した長谷川さんは、自分をではなく、むしろ相手を生かすことにエネルギーを注ぎ、そのことによって自分が生きていることを喜ぶという生き方を貫いた。それは神を喜ばせる生き方であり、それゆえ神は彼に報いて創造のエネルギーを与え、クリエイティブで大きな仕事をさせてくださったのではないだろうか。ご冥福を祈る。