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7月 88歳米寿の誕生日に召天した藤川孝子さんの「旅支度」 ~余市惠泉塾 藤川和夫さんの証言より~

 

「旅支度」とは、人間の魂が救い主イエス・キリストに導かれて父なる神様の待つ天国への凱旋を果たすための準備、死の備えのことです。藤川孝子さんの旅支度については数年間、息子の私も旅支度スタッフの方々も試行錯誤の中、精いっぱい全力で向き合ってきましたが、実際、母の旅支度は完了していませんでした。そんな母に、終わりの日は突然やってきました。

今年の夏期聖会は6月10日から3日間行われました。惠泉虹乃家のスタッフによると、母は例年よりも元気そうに、集中してTeams(オンライン)で参加できていたそうです。ところが、その1週間後の6月19日、私が虹乃家に行ってみると、母は別人のように見えるほど痩せていました。体がつらくて主日礼拝にも参加できなった、と申し訳なさそうに話します。気になった私は翌日の作業後、再び母のところへ行き、様子を見ましたが、そのとき、母はこのまま死ぬかもしれないと直感しました。

そこで、虹乃家のスタッフの方に惠泉マリア訪問看護ステーションの方への連絡を依頼したところ、マリアと共に、主治医の中島恒子先生も往診に来てくださいました。そして翌21日から、多忙な木下肇先生も頻繁に来てくださり、孝子さん人生最後の旅支度が始まりました。

さて、虹乃家での生活を通して母のことをよく知る数人の方から、「孝子さんは相当我慢強い人だから、あれほど痛がるのは余程の痛みなのでは?」と言われました。私も、88年の母の生涯を通して最も痛みに耐えた2日間ではなかったかと想像します。先日の「小池辰雄を読む会」では、苦しみのドン底で神様にひれ伏して祈ることを学んだばかりでしたが、21日夕方から、母の死因となった胸部大動脈劉破裂に伴う、胸や背中の痛みが始まり、中島先生から、かなりきつい痛み止めの座薬が処方されました。最初は30分位で緩和されていましたが、22日早朝から痛みが消えることはなくなり、波のように襲ってくる痛みに、ひたすら耐えるばかりの母でした。

そして朝になり、マリアを通して、中島先生にさらに強い痛み止めを依頼していただきましたが、「今日は在庫がない。明日になる」というお返事でした。そのとき私は、ひたすら耐えている母には大変申し訳ないのですが、これは神様の御心なのではないかと感じました。なぜなら、もしその薬を使用していたら…、おそらく母は痛みに苦しむこともなく、意識のないまま眠るようにして死んでいたのではないかと思うからです。しかし、肝心の旅支度の方はまだできていなかったのです。もし、あのまま母が死んでいたら、息子の私は永遠に後悔していたと思います。88年のうちの2日間の苦しみを引き受けるか? 永遠の地獄を選ぶか? そのことを考えると、神様の深い憐れみに感謝せずにはいられません。

22日午前中に木下先生が訪問してくださり、痛みを薬で取り去るのではなく、神様にお委ねすること、すがりついて神様にお任せすることを聖書の御言葉を通して教えていただきました。母は強い薬を飲んでおらず、まだ意識があったので、痛みに耐えながらも木下先生の言葉に頷き、応答し、次第に痛みは落ち着いていきました。木下先生が帰られると息子の私が後を引き継ぎ、母の手を握ってイエス様の言葉を中心にひたすら聖書を朗読しました。痛みが激しくなったときには、その痛みを与えておられる神様に向かって祈り、また聖書を読む、ということを繰り返しました。

やがて母の痛みは全くなくなり、毎日のように聴いていた水谷先生のCDを、何本も静かに聞くことができました。これは本当に不思議なことでした。相当強い痛み止めすら効かなくなった母の体から、数時間、全く痛みが消えてしまったのです。

しかし、22日夜になって再び激痛にさいなまれ始めた母の苦しみを軽減するため、私は何度か起きて祈ってまた眠り、体位を変えたりすることを繰り返しました。最後、20時をだいぶ過ぎた頃には相当激しい痛みで大声を出しました。体はベッドの柵にしがみつくようになり、耐えがたい表情を見せました。

私は母に声をかけて祈り、体をまっすぐに伸ばし、少しでも楽になるように努めました。すると痛みも消えたようなので、水谷先生のメッセージの中から、「創世記」45章ヨセフ物語のクライマックス、「罪は恵みに変えられて」と題するCDを選んで聴きながら、2人で眠りにつきました。

私はその頃ずっと安眠することができていませんでしたが、いつの間にか眠り、明けて6月23日0時20分、ふと目を覚まして母の様子を見たとき、すべての痛みや思い煩いから解放された母が、安らかな表情でまっすぐ上を向いて、静かに、眠るように息を引き取っていたのです。

それはまるで、イエス様が母のところへ来てくださったような2日間でした。契約を結んだ者に対する神様のご真実を知らされました。激痛を与えることを通して完全に母をイエス様と一致させたもう神様、今も生きて働きたもう神様のなさりように私は圧倒されました。神様が御子イエス・キリストを遣わして旅支度を整えてくださり、死を乗り越えて母を導き、母の人生を全うしてくださったのです。アーメン。ハレルヤ。