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12月 『神の秘められた計画』と『後世への最大遺物』~ 永遠の価値ある書物の魅力 ~

2018年、水谷幹夫説教集『神の秘められた計画』が文泉書院から出版されましたが、2020年の今年は、英訳版『神の秘められた計画』がニューヨーク教会の平野夫妻らの尽力によって翻訳され、アメリカで出版の運びとなりました。いよいよ世界のキリスト教史を塗りかえんとする歴史的な一書が、日本語と英語で読んでいただけることになったのです。

「『神の秘められた計画』が分かると人生が大きく一変します。私たちは『惠泉塾』でそれを経験しました。」「この奥義は初めに使徒パウロに啓示されました。2000年前まで誰も知りませんでした。ところが、世界のキリスト教会はこの奥義に着目しませんでした。ルターやカルバンでさえ着目しなかったので、今日まで『神の秘められた計画』について語る人がいませんでした。」「さて、大切なのはその創造目的です。それが、私たちが人生の苦しみから解放される鍵だからです。私はそれをパウロに教えられました。それは『異なるものが互いに愛し合って一つとなる世界づくり』ということです。このことが分かると、この人間社会でどう生きれば充実感を味わえるか、知ることができます。」(水谷幹夫『神の秘められた計画 上』より)

ところでこれより120年前、内村鑑三の講演集『後世への最大遺物』が単行本として刊行されていますが、『神の秘められた計画』と『後世への最大遺物』、この記念すべき2冊の書物の、興味深いつながりについて考えました。

「人間が後世に遺すことのできる遺物がある。それは勇ましい高尚なる生涯であると思います。しかして高尚なる勇ましい生涯とは何であるかというと、この世の中はけっして悪魔が支配する世の中にあらずして、神が支配する世の中であるということを信ずることである。失望の世の中にあらずして、希望の世の中であることを信ずることである。」
「己れの信ずることを実行するものが真面目なる信者です。ただただ壮語大言することは誰にでもできます。いくら神学を研究しても、いくら哲学書を読みても、われわれの信じた主義を真面目に実行するところの精神がありませぬあいだは、神はわれわれにとって異邦人であります。それゆえにわれわれは神がわれわれに知らしたことをそのまま実行いたさなければなりません。」(内村鑑三『後世への最大遺物』より)

この時代、「神がわれわれに知らしたこと」とは、日本キリスト召団の水谷幹夫先生に啓示された「神の秘められた計画」であったのです。神は、この世界は神がお造りになったと告げます。神に御計画があり、目的をもって造られたというのです。このことが前提です。そして、神は愛の別名ですから、この世界には神のご本性、すなわち神の愛が貫かれており、愛に支配されているというのです。しかし、目に見える世の中は悪魔が牛耳っているように見えます。欲望の法則で貫かれているように見えます。とても愛が支配しているとは思えません。惠泉塾など、この悪の世にぽっかり浮いた風変わりな小島のようにしか見えません。
しかし、真実は違います。神の創造された大きな愛し合う世界の中に、小さな人間がつくった欲望中心社会がぽつんとあるのです。人間はそれがすべてだと思っていますが、そうではありません。悪魔に騙されてそう信じ込まされていますが、もっと大きな神の愛の支配に包まれているのです。
神はその小さな人間中心の欲望社会に介入され、ご自身を現されて神の愛を示し、私たちに救いの道を開き給いました。人間をイエス・キリストに出会わせ、絶対界を見せてそこへ招き入れようとなさいました。招かれた人は出会った瞬間、自分の知らない世界がある!と分かります。小さな悪魔社会の殻を破って外に出ると、大きな愛し合う神の世界がそこにあったのです。
その大きな世界に目が開かれ、神の勝利と栄光に輝く永遠界があることを知ります。そして躍り上がって喜び、神の愛の支配を信じ受け入れるのです。救いの門から永遠界に入って行けると分かると、死を恐れなくなります。死はゴールではなく、通過点に過ぎないことに気づかされるからです。
内村鑑三先生は「この世の中は決して悪魔が支配する世の中にあらずして、神が支配する世の中であるということを信じること」が、人間として最も「高尚なる勇ましい人生である」と結論づけました。「己れの信ずるところを実行するもの」が真のクリスチャンである、と。
一方、水谷幹夫先生も、信じて救われた者は解放されたその自由を謳歌するのではなく、神の御計画に沿う「愛し合って一つとなる世界づくり」のために貢献すべきことを説きます。
私たちクリスチャンが「信ずるところを実行するもの」となり、聖霊を受けて隣人愛の実践に励むとき、内村先生の言う「この世の中は悲嘆の世の中でなくして、歓喜の世の中であるという考えをわれわれの生涯に実行して、その生涯を世の中への贈物としてこの世を去る」という捨て身の生き方が可能になるのではないでしょうか。
私たちは平凡な人間にすぎませんが、ますます砕かれて小さくなってこの真理に目覚め、神のご支配、ご計画を受け入れることで、生きて甲斐ある人生、高尚なる勇ましい人生を歩むことができる、希望の世の中を生きることができる、と両書が教えてくれています。
永遠の光を放つ書物、古びず、色褪せない書物、人の魂を鼓舞してやまない価値ある書物の魅力を、私は今回、この両書に共通する真理の発見を通してもまた深く教えられました。

(文泉書院  長野初美)