2021年4月10日(土)、翌日新装オープンする「森ヒロコ・スタシス記念小樽バザールヴィタ美術館」でオープニングセレモニーが行われました。
古くからのこの美術館の関係者や、千葉からのバザール応援団など30名様をご招待し、「人生を美しく飾るもの」をテーマに、オペラ歌手砂田直規氏の歌とジャズピアニスト保坂修平氏の演奏、水谷幹夫ヴィタポート会長の講演を聴いていただきました。また、この日は、美術館の外に行きかう人々にもパンや珈琲がふるまわれました。
2016年に館長の長谷川洋行氏が、2017年に森ヒロコ氏が、相次いで他界したこの美術館、いったいこれからどうなっていくのかと、ファンの間では心配がありました。
森ヒロコは最晩年、癌を患い、夫を亡くし、甥の木下肇ヴィタポート社長の世話を受けながら、余市町豊丘の「惠泉塾」で過ごし、この美術館を木下氏に託して召されていきました。そういうわけで私たちスタッフは、それまで千葉で営んできたヴィタポートのショウルームとギャラリー喫茶を丸ごと小樽へ持ってくることになったのです。
こうして1月7日(水)、夕方には、関東で新型コロナウィルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が発令されるという日の朝、私たちは小樽へ旅立ちました。
ノスタルジーの街・小樽にある、近代的な建物と、昔ながらの石蔵が共存する「森ヒロコ・スタシス美術館」。ここは、銅版画家「森ヒロコ」の猫や子どもを題材とした硬質で繊細な銅版画と、森ヒロコの夫・長谷川洋行の発掘した「スタシス」の作品、スロバキアの天才画家ブルノフスキの作品や日本でも人気の高いポーランドの作家ヴィルコンによる木や金属を使った動物のオブジェなど、日本では珍しい東欧の美術作品に触れることのできる美術館として、1994年に設立されてから現在に至るまで国内外から親しまれてきました。
一方、これまで千葉にあった「バザールヴィタ ギャラリーオアシス」は、11年の歳月の中で、たくさんの芸術家と音楽家との出会いを体験し、成長してきました。生活に根差した本物の家具、パティシエの手作りケーキ、自社焙煎珈琲と安心安全な野菜や果物、天然酵母のパン。そして月ごとに変化する芸術品の展示と、世界各国の楽器による民族音楽のコンサート。何気ない日々の出会いから生まれる温かい空気…。自分の家のように憩える場所として地域の方々に愛され、人と人とをつなぐ交流の場となってまいりました。
私たちはこの温かい空気をそのまま千葉から小樽へ移し、「森ヒロコ・スタシス美術館」との融合を通して、さらなる文化発信の場、交流の場としていきたいと考えています。庭には季節の花が咲き、野菜が育ち、冬には積もった雪でアートを行う。一流の絵画の飾られた空間で音楽のコンサートを行い、天然酵母パンや自社焙煎珈琲を味わう…。そんな小樽の新名所にしたいと思います。
当日の講演会で会長は、金儲けのためでなく、自分の出費は気にせず、本物を紹介したくて、こんなに素晴らしい美術や音楽があるということを皆に知らせる働きをした長谷川氏や森氏の思い出を語りました。そして、この美術館の歴史を振り返りながら、人生を美しく飾るものとは何だろうか、と、聴衆に問いかけました。
会長のしている人助けに感動したある弁護士は、金は要らないと言って会長の顧問弁護士を引き受けてくれたそうです。それで会長は「丹波の宿 恵泉」に彼を招待したのですが、その席上、集まった人たち全員に一万円コース料理を振舞ったとき、弁護士先生は、骨董品の盃で珍しいお酒をふるまい、全員で至福のひとときを分かち合うことができたそうです。そして後日、会長は招待客の一人から「美しい時間をありがとうございました」というお礼の手紙をもらったとのことでした。
会長は、その「美しい時間」という彼女の言葉と感性に感動したことを話してくれました。講演を聴いた私はそのとき、この美術館も同じ方針で行こう、と自覚させられました。
最後に、オープニングセレモニーのときに寄せられたお祝いの言葉をご紹介いたします。
「新しい美術館は、『芸術と生活~庭でつなぐ~』というテーマの下『だれが職員なのか、お客様なのかわからない』空間をめざしていると伺っています。『美術館』というちょっと敷居の高いところがもっと身近な存在になれば、天国のご夫妻もきっと喜ばれることでしょう。これまでにない素敵な場所が生まれて、育っていくことを私も楽しみにしています。近いうちにぜひこの目で確かめに行きたいと思います。」
私たちも、訪れてくださる皆様にぜひ「美しい時間」を提供したいと願っております。
スタッフ一同、世界中どこにもないユニークで素晴らしい美術館を目指し、神と共にあって成長してまいりますので、皆様、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
(「森ヒロコ・スタシス記念小樽バザールヴィタ美術館」責任者 杉浦恵)