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9月 夏の思い出「海水浴」を企画して ~惠泉塾は天国の前味~

 

余市惠泉塾  山守そのみ

「いかだレースやビーチバレーやリレー等、プログラムを作るところから取り組んでみて、どの競技も協力しながら自然体でできたと思います。ありのままの素顔、まっすぐな姿勢って大事だなと感じました。(塾生Tさん感想文より)」

塾では3年ぶり、私にとっては余市で初めての海水浴。「塾生の集い」の一環として8月10日(水)、近くの海水浴場にて40人規模での開催となった。4人の塾生それぞれが1種目ずつリーダーを担当し、教育係がそれをサポートした。
第1種目、いかだレース。担当はS君。代々引き継がれている手作りのいかだに乗って、3チームでタイムを競うというもの。リハーサルを終え、本気モード!で、各チーム1秒を争う激戦となった。
第2種目、ビーチバレー。担当はK君。サポート役と共にルールを考え、手作りのネットを持参。小学生から60代まで、世代を超えて楽しんだ。「タッチネット!」「アウト!」と声が飛び交い、見たことない皆の真剣な表情が見られた。
第3種目、スイカ割り。担当はKさん。普段はやる気なさそうにしている高校生のJ君も、ペアの女性の指示通りにスイカの前に立ち、大きく振りかぶって棒を振り下ろすと、スイカは見事真っ二つに! 海でスイカを食べながら北海道の夏を感じた。
第4種目、詰め合わせリレー。担当はTさん。1巡目、バケツ満杯まで砂を詰め、二人で持って走る。男性たちがたくましく挑んだ。2巡目、風船を手で挟んでペアで走る。「私は参加しないです」と言っていた60代の男性も、促されるがままに夫婦で仲良く走っていた。3巡目、借り物競争。塾生たちが用意したお題に沿って走る。4巡目は二人三脚。さすがは惠泉塾、息は皆ぴったり。
午後は自由時間。海で泳ぐ人、誘い合ってビーチバレーする人、のんびり景色を眺める人、近くのテント立てを手伝う人…。一人ぽつんと取り残される人はいなかった。「非日常を楽しめた」と、余市に来て1ヵ月という塾生S君も爽やかな顔だった。
海水浴翌日、私を訪ねて塾生K君が珍しく事務所にやってきた。「塾生の集い」の感想文を提出しに来てくれたのだ。「余市で初めての海、今までは悪い海水浴だったなと思い出しながら、今考えたらこんな楽しい海水浴したことないなと思えてよかったです。海で泳いで、ビーチバレーして、めっちゃ楽しかったです!」(塾生K君感想文より)
“今までは悪い海水浴だった”―― ここでは違う。人を生かす海水浴。皆が生き生きとされるための企画。来塾当初は無表情だった塾生が満面の笑顔になり、体力がなかった塾生が大きな声を出して盛り上げ、喋れなかった塾生が人前でルール説明をし、生きる気力を失っていた塾生が前向きになっていた。根底に、惠泉塾の存在目的「治療と教育」がある。
「外で、海岸で、自然の光を浴びながらすごく感謝の多い一日でした。(塾生Tさん感想文より)」山と海に囲まれた余市惠泉塾では、本物の教育に取り組んでいる。
8月21日(日)の主日礼拝で水谷先生は語られた。「私たちは毎日毎日の単調な作業で終わらない。あるときにはそうやってはちきれて、自由になる。表情が違う。若さ満喫、という時間を過ごしたものです。これが天国。惠泉塾は天国の前味ですよ。」「神様の素晴らしいしるしと不思議と奇跡を見せていただいて、感動に次ぐ感動の毎日。そのしるしが、私たち自身なんです。」
閉塾まであと3ヵ月。全世界が神様に注目するために。自然を舞台とした天国づくり、本物の教育に励みたい。

余市惠泉塾  保坂晋平

「さざ波の音を聞いているだけで癒される」と隣で誰かが言っている。波打ち際に腰を下ろし、足の指を水に浸して水平線の彼方をぼんやりと眺めてみる。砂を掌に掬いながら水飛沫が舞う音を聞く。
冷たい水に恐れをなし、おずおずと入っていく人がいる。浮き輪に体を収めて、波に運ばれるのを楽しんでいる人がいる。小学生の女の子の手をとって一緒に泳いでいる人がいる。
今日は惠泉塾の海水浴の日。何の変哲もない海水浴場である。しかし惠泉塾で共に暮らす人たちとの大切な家族行事であり、単なるレジャーではなかった。
白い砂浜でスイカ割りをした。普段もの静かな塾生が弾ける笑顔を見せていた。いかだレースがあった。皆真剣にいかだを押し、または引き、または漕いでいた。ビーチバレーが実施された。日頃おとなしい女性が意外な大活躍をして歓声が起こった。フリスビーに興じる若者と高校生の男の子がいた。擬似親子のようだった。波の中に泳ぐ魚を嬉々として指さす人がいた。職場の顔とは違った。
楽しい一日であった。何も考えずにあっという間に時間が過ぎた。日焼けした腕がヒリヒリと心地よい。夜はなかなか眠ることができなかった。
なぜか。海ぐらい何度も行ったことがある。海の蒼さも雲の白さもおんなじなのに、何が違うのか。無理に言葉にするのはやめておこうと思う。海辺は童心を甦らせる教室。惠泉塾は純粋な「遊び・楽しさ」を教えてくれる学校である、とおぼろげながら感じた。