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I for Japan, Japan for the world ~ 余市惠泉塾「塾生の集い」を担当して ~

今年の「塾生の集い」のテーマは、”I for Japan, Japan for the world”。これは内村鑑三先生の言葉で、「私は日本のために、日本は世界のために」という意味です。このあとに、The World for Christ, And All for God. ―— 世界はキリストのために、すべては神のために、と続きます。

「私」は「私」のために生きるのではなく、全体のため、日本、世界、そして神のため、と自分から外へ目を向けたとき、こんなにも世界は新しいことに満ちているのか!と驚きます。私自身そうでした。これまで20ヵ国くらい、外国を訪問しましたが、いかに世界は豊かで自分はちっぽけかということに気づき、異なることの素晴らしさを実感します。

余市惠泉塾に来てからもそうでした。農作業、食事づくり、掃除…と、毎日当たり前の生活をしているのですが、その中でたくさんの新しい発見をします。今、私たちが信仰訓練を受けているこの余市から北海道、日本、そして世界へと視野を広げ、自分のことで苦しむ人生から、世界に目を向ける豊かな人生へ乗り移ってほしい、との願いを込めて、このテーマを設定しました。

 

  • 余市の魅力

 

6月、余市惠泉塾内にある、「珈琲とパンの店ヴィタ」を訪問し、コーヒー豆の焙煎について、レストランの魅力について、お話を伺いました。「本物をつくるって素敵だなと思う」「本物を生かす、素材を生かすという話を聞き、料理にも愛が必要だと思った」などの感想がありました。

7月には「惠泉ノア製作所」を訪問し、木下肇先生に木の魅力を熱く語っていただきました。「ノアのスピリットを伺い、単なる商品を生み出しているのではないことが分かった」「誇りをもって仕事をされている職人魂を感じた」との声がありました。「本物を提供する」ヴィタポートの精神、「本来の良さを生かす」召団のスピリットが土台にあることを皆で実感しました。

余市には山も海もあります。7月には近くの円山公園へ出かけました。皆でお弁当を食べ、丘に登り、そこから見た海の景色は絶景です。 帰りに寄った余市港では海とカモメを見ていつまでも見飽きることがありませんでした。

 

  • 北海道の魅力

 

何といってもこの大自然! 春には惠泉山へ山菜採りに出かけました。川を越え、瓦礫をかきわけ、熊のフンを横目に皆で進んでいきました。花わさび、こごみ、あさつき、タケノコ、タラの芽、ヨモギ、ワラビ、フキ…、たくさんの山菜が採れたので、塾の皆さんにおすそ分けして、春の収穫を喜び合いました。

7月には小樽公園へ。北海道に滞在した詩人・石川啄木の記念碑を目当てに、散策に行きました。余市で見る海とはまた違う景色を味わいつつ、木陰で涼みながら癒しのひとときを過ごしました。北海道の魅力はまだほんの一部しか味わっていません。これから、新たな側面を探っていきたいです。

 

  • 日本の魅力

 

沖縄の歴史や文化、沖縄の誇りについて学びました。「リゾート地としての沖縄だけでなく、戦争や米軍基地の問題にも目を向けなければならないと思った」「沖縄の方の手記に胸が痛んだ。もし自分がこんな生活を強いられたら、と考えさせられる。もっと沖縄について知らなければいけない」と、私たちが日本の歴史にどう向き合うべきか、考えさせられるひとときとなりました。

8月、元国語教師、水谷先生による宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の授業が行われました。「宮沢賢治の幸福論、時代背景や歴史についても分かりやすく説明してくれたので、話がよく理解できた。幸せとは何か、出会いを通して学んでいきながらも、どこかあいまいで確信が持てず、不安や孤独を抱える姿に、淋しい気持ちになった」という感想があり、物語だけでなく、人生について考えを深める白熱した授業となりました。「こんな授業を学生時代に受けていたら…」という主婦の声がたくさん聞こえるほどの圧巻でした。

9月には有島武郎「小さき者へ」の授業も予定しています。作者や時代背景について事前学習をして臨み、一人一人の成長につながる学びになることを期待します。

 

  • 世界へ目を向ける

 

6月、水谷先生著『神の秘められた計画』の英訳本”God’s secret plan” による読書会をしました。翻訳者である平野さんとチームズ対談も行い、翻訳の難しさ、繊細さを知ると同時に、まだ十分に読み広められていない現状も知り、「この召団の素晴らしい働きをどう伝えていけばいいのか?」「世界に惠泉塾のような信仰生活共同体はどれくらいあるのか?」と、塾生が世界を意識する第一歩となりました。

7月に訪問した森ヒロコ・スタシス記念小樽バザールヴィタ美術館では、ポーランドで活躍する画家スタシス、ポーランド人彫刻家ヴィルコン、そして森ヒロコさんの作品が展示されている蔵を見ました。作者の特徴、時代背景などの説明を聞きながら、東欧美術に触れるきっかけとなりました。また美術館の皆さんとポーランド料理を作り、異文化を体験的に味わいました。

 

一人一人が苦しむ人生から抜け出し、世界の魅力、新しい発見に感動し、生き生きと暮らすことができるよう、そのきっかけづくり、教材の提供が、私たちの任務です。中途半端な準備では成り立ちませんが、実際は、塾生たちのまっすぐな学びへの姿勢、素直に受け取る心に触れ、スタッフの方がいつも励まされています。彼らの変化を見ることができ、神様の奇跡を間近で感じることができるのも特権です。

スタッフと参加者が互いに愛し合う「塾生の集い」となり、残りの3ヵ月間、神様に存分に働いていただけることを期待します。神様は何を用意されているか、塾生たちにどんな変化が起きるか⁉ スタッフ、塾生とも、今を本気で生き抜いていきたいと思います。

(余市惠泉塾 教育係  山守そのみ)