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9月 収穫の秋たけなわの惠泉塾

余市は例年になく高温多湿で凌ぎにくい夏には閉口したが、立秋の声を聞くなり、朝晩の気温が下がって蒸し暑

い夜からあっという間に解放された。お盆を過ぎると途端に秋の風情が漂い始めるから不思議だ。雲が、風が、空気が、爽秋の気配を日に日に増し加えていく。この季節、サクランボに続いて梅、プラム、プルーン、リンゴ、梨と、果樹園の実りが豊かだった。そして、ジャガイモ、枝豆、とうもろこし、トマト、ズッキーニ、レタス、キャベツと畑の野菜の育ちがいい。葉物野菜の豊作で、オーガニックレストランさながら惠泉塾の食卓は無農薬有機栽培の健やかな野菜サラダや炒め物に彩られた。神に感謝の祈りを献げ、労働の喜びを共にしながらの夕べのひとときは格別賑やかで楽しい。  8月の雨上がりの朝、畑が乾くのを待って、ジャガイモの収穫に取り掛かった。塾生、農業関係者のほか、普段は事務中心のヴィタポート職員も加わる。藤川和夫さんをリーダーとする野菜班が、丹精込めて世話をしたジャガイモ畑一面の「きたあかり」。まずは、ちょうど良い枯れ具合だという種芋の茎の残る盛り土に、芋を傷つけないようにスコップを入れる。掘り返された畝にみんなが跪いて、これも、芋を傷つけないように土を探りながら芋を掘っていく。掘り残しがないように丁寧に作業を進めていくと、一列の畝が10メートル以上あるのでなかなか完成に至らない。気持ちの良い汗をかきつつ、ふと見ると、誰もがみんな無口になって作業にのめりこんでいる。緑滴る草木の瑞々しさ、北国の陽光の明るさ…、聖霊に開かれた目に入る造化の妙に息を呑む。命を育む土にまみれつつ、無音のまま流れるひとときの時間が心地良い。  惠泉塾を始めたころの水谷先生が作られた入塾案内の中に、次のような言葉を見つけた。 「農業は“快食快眠快便”の健康生活に私たちを導きます。過度の神経疲労は人を殺しますが、金儲けと無縁の純粋な農業は人に自然の摂理を悟らせ、創造主を実感させます。自然には多少の人の手違いにも一々目くじら立てない懐の深さがあります。農業は孤独な個人プレイよりも楽しい共同作業に適しています。みんなで心を合わせて協力しつつ働いた後の爽快感は筆舌尽くし難いです。そこから仲間意識が生まれます。助け合いの心地よさを味わいます。技術習得の意欲が湧きます。本気で働くのは実に気持ちが良いものです。人間の肉体は、土を耕し草木の世話をするのを快く感じるように出来ているようです。」 (水谷惠信『惠泉塾10年のあゆみ』所収)